「スープ~生まれ変わりの物語~」大塚祐吉 ★★★★★
再三この映画の素晴らしさについて、つぶやいていますが、言っても言ってもいい足りないくらいの感じです。おそらく、この映画を賞賛することに僕が躍起になっている理由は2つあって、ひとつはこの映画が文句なしに素晴らしいということ。もうひとつは、どうあがいてもこの映画が「ヒット」とは縁遠いということです。この2つ目の文脈においては、アレンの新作が素晴らしいとか、スピルバーグの新作がいまいちだとかいう必要はまったくないわけです。僕の感想なんて絶対に他の誰か、それも何百人も何千人もいる他の誰かと同じだから。だからこそ、僕はこの「スープ」の素晴らしさを語らないといけないという使命感を(勝手に)感じているのです。ヒットとは縁遠いというのは、資本主義的な要請によるものであって、作品としてはものすごい真正面から、ラブコメとしてSFとして親子ものとして、また女優を魅せる映画として素晴らしいのであって、決して「カルト的な人気を誇る」とかそういうところに落ち着くべきではないということをあらかじめ伝えておきたいと思います。
この映画の大きな軸になっているのは15の娘・美加(刈谷友衣子)を残して事故で死んでしまった父親・渋谷健一(生瀬勝久)が、あの世からこの世の(置き去りにしてしまった娘の)記憶を持ったままこの世に生まれ変わるというストーリーです。構成としては大きく3つの部分に分かれていて、1つ目が2年前に奥さんと離婚して娘と2人で暮らすお父さん(生瀬)のパート。2つ目がお父さんが死んでからのあの世パート(with 小西真奈美と松方弘樹)と残された娘のこの世パートが並行して進み、3つ目でこの世に生まれ変わった生瀬が高校生になってからの話。
僕は初見でこの3つ目のパート、主人公が生まれ変わって高校生になってからの話がいわゆる学園ものとして突出して素晴らしいと思っていたのですが、再見したらやはり、その3つ目のパートの素晴らしさを支えていたのは1つ目と2つ目のパートなんですね。だからもちろんそれも素晴らしいわけです。結局すべてが素晴らしいわけです。
しかし、ここではやはり3つ目の学園パートについて取り上げたいと思います。話の内容について詳述したくないのですが、学園パートの人物関係の描き方の繊細さは絶妙なキャスティングと演出と演技に支えられて本当に昨今の日本映画界最高度の達成と言うことができるのではないでしょうか。同じ教室にいたら卒倒するレベルの超絶美少女・広瀬アリスが、生瀬の生まれ変わりである朴訥青年の野村周平を遠巻きに眺めている数カットなんて、気もそぞろ感、男の子同士のいちゃつき感など、甘酸っぱくてほろ苦くて、でもその視線の意味は実は……って落としどころも面白いですし、そこに絡んでくる歯並びの悪い意地悪そうな美少女・橋本愛がまた絶妙な顔と声と表情と演技で彼女もまた過去生からのお付き合いに絡んでくるんですが、ここでは「生まれ変わり」という世間的には荒唐無稽な話が思春期の恋愛に最高のスパイスとして機能しているわけです。それもこの映画のやや鈍重に思えた前半部分があったからこそなんですね。
クライマックスはもうネ申展開としか言いようがない「秋刀魚の味」(および後期小津の父娘モノ)の変奏なわけですが、ここでオープニングのシーンが何を意味していたのかが明かされ、お互いに打ち明ける対象の不在という致命的な問題を抱えていた2人の積年の思いが語られるに至って、私たちは涙以外の何を持ってこのシーンに対峙しうるのでしょうか。
とにかくあらゆる人にとって、一刻も早くスクリーンで見るべき映画であることは間違いないです。激しくオススメです。
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