2014年7月30日水曜日

おじさんはなぜモテるのか?

誰かの示してくれた理解(とときどき承認)を愛情と取り違えるという過ちはしばしばある。とりわけ、その相手が異性の場合、この理解が関係を深めるきっかけになってしまったりする。そして、多くの場合、この理解は相互には成り立ちにくいため、幸福な結末というのは考えにくい。

ほとんどの自立していない男女はこの「理解」にめっぽう弱い。「わかってほしい」彼や彼女にとっては理解そのものは尊いかもしれないが、ある程度の洞察力を持った者にしてみれば、彼らが求めている程度の理解を与えることは実にたやすい。

一番たちが悪いのは、無自覚に他人に(特に異性に)理解を示したことで、相手の歓心を買うことを「モテ」だと勘違いする輩だ。おじさんとお嬢さんの間で、しばしば恋愛風の関係が成立するのにはこうした背景がある。 

いちおじさんとして悪用に努めたい。

2014年7月24日木曜日

徴は至る所に

「アルケミスト」パウロ・コエーリョ
久々に本の感想。アホみたいに悩んで苦しんで遠回りしてたどり着いた(かに見えた)ところが実はまだ目的地への過程の一部なんじゃないかという疑いは、どんな満足のいく状態にあったとしても常にぬぐい去ることができない。折り返し地点でも三里塚でも、それが本当のゴールではない以上、うつろいゆく過程の一部でしかないのだ。

「幸福」な状態とそれをもたらしている対象は、私たちの中に依存と執着を生む。私たちは多くの場合、その幸福が一過性のものであることから目をそらし、その状態と対象に変化が訪れたとき初めて、自分がその状態と対象に深く依存し、執着していたと気づくのだ。たいていの場合、それは対象の喪失という形でやってくる。

だから僕は、幸福な状態とそれをもたらしている対象に目を凝らし、依存と執着が生まれるメカニズムから注意をそらさぬように自分を見張り続けている。幸福な状態を無自覚に味わうことは放棄されたが、すべての代償がゴールにたどり着くために必要な過程だと僕たちは既に知っているのだから、それが苦しみでも喜びでも等しく享受すればよいのだと思う。

2014年7月15日火曜日

面白いおじさんが撮った普通の映画

「リアリティのダンス」アレハンドロ・ホドロフスキー
面白いおじさんが自由気ままに撮った普通の映画って感じでしたね。期待していたような超現実的描写や韜晦はまったくなく、それどころかこれ以上ないくらい明快で、そのあまりの明快さに鼻白むレベルです。父ちゃん、母ちゃん、ユダヤ系の出自、チリの政治をあられもない精神分析的な解釈を交えながら描写するってお前どれだけ天然なんだよって突っ込みたくなるのも無理ないですよね。そういうタブーというよりはド天然を元気よくやってるものだから、その元気のよさにやられちゃう人もいるんでしょう。ただ、あられもない自分語りをするんだったら、やはりその「自分」に素材としての強さがないと作品としては面白いものにはならないですよね。作家本人が面白いおじさんなのは「ホドロフスキーのDUNE」で証明済みなわけですが、こと映画作家としてどうかという話になると、あまりにも野心を欠いたただの癒されたいおじさんじゃないかと思えてしまうんです。カルトって言われるにはそれなりの理由があるんだなと得心しました。

「グランド・ブダペスト・ホテル」ウェス・アンダーソン
ウェス・アンダーソンと東欧・旧共産圏的な意匠の親和性の高さを冒頭からビンビン感じながら引き込まれていったんだけど、結果的にはアンダーソン作品のうちの1本という以上の感慨はなかった。ラデュレみたいなお菓子やさんのパッケージとかああいう仕事を抜かりなくやってるから日本の「文化的な」観客のウケもいいんだろうな。ところどころ寝ちゃったけど、抜け感のある「ムーンライズ・キングダム」の方が好きだった。

2014年7月4日金曜日

カリスマ系

「ホドロフスキーのDUNE」フランク・パヴィッチ
恥ずかしながら名前しか知らなかったアレハンドロ・ホドロフスキー(メキシコ)。この1本で大体どういう人かはわかったと思う。雑にカテゴライズするとスピリチュアル系のパゾリーニなんて言ったら怒る人いるだろうけど、そんな印象を受けた。良くも悪くもこういうカリスマ系っているよね。作品よりも作家の方が魅力的っていう(作品観てないからそこは彼に関しては保留にするけど)。

単純に感心したのは、本当にその分野のプロ(A.K.A. 魂の戦士)を1人1人尋ねて回ってチームに引き入れていくっていうRPG的なプロセス。絵コンテを描かせるためだけにメビウス(フランス)、特殊効果にダン・オバノン(アメリカ)、デザインにギーガー(スイス)、音楽にピンク・フロイド(イギリス)、俳優にミック・ジャガー、サルバドール・ダリ、オーソン・ウェルズ。国境を越えてこれらの人々にアクセスするだけでもすごい。まあ実現するわけがないわなって今だったら思ってしまう。でもそれが実現一歩手前まで行っていたってことが驚きじゃないか。

映像化されてたらどうなってたかっていうのは誰もが夢想するところだろうけど、仕上がりのクオリティーに対する期待は半々くらいだな。でも駄作ってことはないと思う。失敗作だったとしてもね。とりあえず、過去作はスクリーンでかかったら見る。あと新作の「リアリティのダンス」も見る。あと個人的にはメビウスの絵コンテ集は見てみたい。