2012年2月22日水曜日

または子供十字軍

「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」スティーブン・ダルドリー
東京大空襲と並び称されるほどの連合国側の暴挙として名高いドレスデン爆撃の不発弾が原因で声を失ったユダヤ系と思しき祖父(マックス・フォン・シドー)に、911で父親(トム・ハンクス)を失った息子(トマス・ホーン)が誰にも打ち明けることのできなかった思いの丈をぶつけるというにわかには図式的に理解しがたい複層的な事態に私たちは直面させられることになる。

私たちが直面しているのは父を失った一人の少年の喪失感とそれを埋めようとする激情だけではない。失われた声、失われた命、少なくとも六十余年という年月をかけて堆積した怒りや悲しみ、やるせなさを、少年の独白に耳を傾け無言でたたずむ老人の姿から想起することになる。六十余年の地層の上に新たに降り積もったものは歴史の厚みの前では粉砂糖程度のものかもしれない。しかし、粉砂糖が着地することによってその存在が明らかになった地層を前に、私たちはとりあえず涙という形でその厚みを受け止めるほかない。

0 件のコメント:

コメントを投稿