「悪の経典」三池崇
この映画の白眉は、吹越満演じる物理教師釣井が、自分の劣等感を刺激するような相手には非常に敏感なゲス野郎なのに、爽やかでハンサムで仕事もできる伊藤英明、つまり吹越の劣等感を刺激して止まないはずの存在に対してなぜか何も感じないという素晴らしい直感を吐露するシーンで、実際物語はそこから大きく動き出してしまう。
ただ彼は自分の直感が「表面的な現実とは異なる何か」を示唆し、それが見当外れのものではないという事実が明かされていくにつれて、彼がたどり着こうとした事実がまだ誰にも知られていないということに「知的な」興奮を覚えてしまう。あまつさえそれを校内で生徒に口角泡飛ばしながら説明するに至っては、自殺行為に等しいとしか言いようがない。
いやしかし、「俺のペインボディが反応しなかった」ということに反応できた彼の己のシステムの確かさに対する信頼は感動的だった。この映画で唯一彼だけが殺すに値する人物たり得ていた。
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