「その夜の侍」赤堀雅秋
武蔵野館で予告編を見たときに見ておこうと思った1本。薄汚れた青い作業服に脂が浮いた分厚いレンズのメガネをかけている堺雅人になぜかマラソンの宗兄弟が想起され、僕が見ておくべき映画だと直感した。
妻を失ったという喪失感が生きることの柱になってしまった悲しい男の物語。いくつか素晴らしいシーンがあったが、特にザワザワしたのは、堺雅人が山田孝之の日々の3食を読み上げるシーン。このリストアップはとても痛いので是非見てほしい。
抑制の利かない暴力と恫喝で人を支配する山田孝之の怪物性は確かに恐ろしい。しかし、しぶとく着実に自分の欲望を実現しながら生きるのは新井浩文のような男なわけであって、傍若無人に本能のままに生きているように見える山田ではない。軽さの向こうに凄みをたたえた新井の演技、特に踊り場での山田孝之との対決シーンで居心地悪そうにたたずんでいた新井には、チンピラ然とした山田よりも余程空恐ろしいものを感じた。
余談だが、エンディングテーマのUAが歌う「星影の小径」が素晴らしい。ラストシーンにアカペラの歌い出しが本当に感傷的に胸に迫るのだが、この歌が上映前に劇場で流れていなければ、もっと魂持っていかれただろうなと思った。ミニシアターにありがちだけど、上映前にテーマ曲とかサントラ流すのやめた方がいい。
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