2014年6月16日月曜日

更科のスティーブ・ブシェミ

「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」コーエン兄弟
「グランド・ブダペスト・ホテル」を見ようと思ったら、TOHOの日とかでシャンテは夜の回まで満席。しかたなくということでもないけど、見ようとは思っていたコーエン兄弟の新作に。

「猫が行方不明」in NY '60。呼吸するように見ることができてしまう映画だった。それはフックがないっていうことではまったくないんだけど、何の不安もなく100分間その中にいられるような映画というか。主人公のオスカー・アイザックがよかった。才能があって人がよくて詰めが甘くてプライドが高いフォークシンガーを本当にそのものみたいにうまく演じていた。相棒を失って傷心のルーウィンに矢継ぎばやにふりかかる小さな災難、ちょっとずつ歯車が狂って何もうまくいかない。こういうときってある。でも、困難な今を乗り越えて彼は必ずタフガイになる。そういう確信を感じさせてくれる作品だった。

宿も定職もないところに来て発覚するガールフレンド(友人の彼女)の妊娠(程よいビッチ感の漂うキャリー・マリガン)、預かった猫に逃げられ、シカゴへのジャズミュージシャンとの悪夢のようなドライブ、雪のシカゴでは足を水たまりに突っ込み、かつて堕胎したはずのガールフレンドが出産していたと知らされ、亡くした相棒のパートをハモってくるリベラルな東海岸インテリ妻(あのメガネとか絶妙でしょ笑)を罵倒する。螺旋階段を上るように時間は進んでいく。

コーエン兄弟の中でも結構すきな部類の映画だな。そういえば最近コーエン兄弟作品で見なくなったけど、ブシェミは元気だろうか。会社の近くの更科そばの女将さんがブシェミにそっくりなんだけど、それを誰も共有してくれない(そもそもブシェミを知らない!)ので、亡くなるか引退する前に誰か連れて行こうと思う。そばはうまくもまずくもない。


「ノア 約束の舟」ダーレン・アロノフスキー
「グランド・ブダペスト・ホテル」を見ようと思ったら、21時の回も満席だったのでしかたなく。予告編で見て、何でこのテーマでこんな筋肉バカ映画にできるんだよと思ったけど、予想してたよりはちゃんとまとまってた。でも、ノアって信仰心と家族への愛を秤にかけられるようなエピソードじゃなかったという気が……。

神様が地球を浄化するために40日間雨を降らせ続けたっていう非キリスト教徒にもおなじみのエピソード。雨と言えば真っ先にルイス・マイルストンの「雨」が想起されるが、個人的に最も印象深いのは小津の「浮草」の京マチ子と中村雁治郎の喧嘩のシーン。通りをはさんで軒下でにらみ合う2人の切り返しは何度見ても素晴らしい。ムルナウの「サンライズ」の小舟で嵐に遭うシーンもすごかった。この映画もメチャクチャ降ってたけど、映画史に残らない雨だったね(笑)。

すべてを洗い流すデトックス感が味わいたいという方には、しりあがり寿の傑作「方舟」をお勧めします。あのカタルシスは半端ない。ところであんな直方体の舟ってちゃんと水平に浮くの?

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