大人になりきれない人たちを描いた映画にはもううんざりとか言いながらも、とかく饒舌に語りたくなるのはこの種の映画であるというあたりにワタスの限界があるんでしょうね。しかしこの「ヤング≒アダルト」、女優シャーリーズ・セロンの最高傑作じゃないでしょうか。
メイクも落とさずベッドの上に倒れ込むようにしておそらくは泥酔して寝ていたティーン向け小説(YA=ヤングアダルト)の作家メイビス(37歳独身)がミネアポリスの高層マンションの一室で目覚める遅い朝からこの映画は始まる。片付けられていないペットのえさの容器や、Tシャツの中に手を入れてヌーブラをベリベリと剥がす描写やプリンターの切れたインクカートリッジにあんなものを流し込んじゃうとか、ちょっと露悪趣味が過ぎるだろうって思って見てたんだけど、このくらいエキセントリックじゃないと、彼女の激しい「思い込み」が正当化されないという意味では正解なのかもしれない。前作の「マイレージ・マイライフ」よりも救いがないのは、ジョージ・クルーニーは男っていうのもあって彼が直面してたのは仕事一本で生きてきた男の所謂「ミッドライフクライシス」とも要約できるようなものだったと思うんだけど、今作は子無しバツイチ中年女ということでどちらかというと救いがない。美貌も翳り、ステディもおらず、人気連載も終了し、軽い自傷癖があり、心の友はアルコールと一匹の犬。救いは彼女の輝かしい青春時代にしかなかったというわけ
だ。
そんな折、輝かしい青春時代に付き合っていた元彼の第一子誕生の報をメールで受けた彼女は、元彼を取り戻すべく(この発想がまずおかしいのだがw)故郷マーキュリーに旅立つ。一夜を共にした男の腕を縄抜けのようにしてくぐり抜けたメイビスは寝起きの姿のままよれよれのキティちゃんTシャツでミニを走らせて故郷に向かう。故郷で最初に出会う知人が、この映画で唯一の良心とも言える、ハイスクール時代にメイビスとロッカーが隣だったというヲタ。こいつがただのヲタじゃなくてシャレにならないくらいの相当の訳ありで、青春暗黒時代とそこから逃れられない呪縛を背負ってしまっている。「プロムクイーンとして輝いていた」程度の女との対比としてはかなりバランスを欠いたカウンターパートなわけだが、このコントラストのアシンメトリーがマーキュリーでの物語の推進力にもなっているという点はとてもよくできていると思う。(この映画の真のラブストーリーとしての側面はそこにある)
このヲタ絡みの話で僕が好きというか嫌いというかとにかく見過ごせなかったのが、地元では一番イケてるというチェーンのレストランで元彼と再会してすぐのシーン。前述のヲタが店員として働いているために彼のことが2人の話題に上るのだが、ここでの温度差っていうのは非常に微妙で本来なら看過できないものであったはずだ。田舎のイケメン番長の彼は彼女が忌み嫌っているような田舎臭い無神経さ、鈍感さの象徴でもあったわけだ。ハイスクール時代には相対化できなかった「田舎臭さ」は以前と変わらないはずなのだが、「都会」で「(人気)作家」として生活するメイビスはそれを際立たせてしまう。だが彼女の病はそれを看過してしまう。彼女の目に映っていたのは青春時代の「彼」だったから。
クライマックスを待つまでもなく、この映画の「田舎ヘイト」描写は結構出色で、ファッションセンターシマムラみたいなところで「マーク・ジェイコブズはないの?」とか笑えるギャグはあるものの、基本的にはちょっと意地悪過ぎるんじゃないかっていうほど容赦ない。ただやっぱり「いい人」「悪気がない人」特有の無神経さはマジヘイトだよね(^_^;) 余談だけど、僕はこの手の話を見聞きする度に拳銃で自殺した兄を持つ弟に、その両親が弟を「喜ばせようと思って」拳銃をプレゼントしたというエピソードを思い出す。そこまでひどくはなくても想像力の欠如という意味では通底していると感じますね。
基本的にはメイビスは普通の人はまったく感情移入できないような鼻持ちならないクソビッチなんだけど、あるトラウマ体験の告白に至り、俺の中の「田舎者」ヘイトはメイビスと同時に沸点に達しましたね。メイビスの神経症的で都会的なシニシズムにどこか同情的だった俺勝利!w ラストの「カラー・オブ・ハート」を思わせるヲタの妹とのダイアローグはちょっと説明過多で要らないかなっていう気もしたけど、彼女のインスパイアがぶっ壊れたミニにかけられたエンジンだったと考えれば、故郷との決別を決定づけてくれた彼女の存在は必要だったのかもね。「ライフ・ゴーズ・オンもの」としてはかなり好きな部類の映画です。
念のためのエクスキューズだけど、ここで田舎っていうのはローカリティーのことじゃなくて、メンタリティーのことね。まあ両者は密接に関連しているのでエクスキューズにはならないかもしれませんね。(同じくらい都会の洗練やら社交やらも同じかもっとひどいくらいクソなんですが、それはまた機会があれば)
0 件のコメント:
コメントを投稿