2010年8月26日木曜日

週末3本

「シルヴィアのいる街で」 ホセ・ルイス・ゲリン
固定カメラの長回しと音響設計で見せる画面が素晴らしい。コスタとかガレルとかロメールとかいろんな名前が思い浮かぶけど、それは野心の現れとして、素直に喜んでおきたい。この映画の大半はストラスブールの街を歩くことに費やされるんだけど、街を横断するトラムや細い路地、広場とその場所の空気が息づいているような画面が本当に贅沢だ。監督が参照項目として挙げているという「サンライズ」には及ばないまでも、その追究するところの「贅沢さ」、「贅沢さ」を追究する姿勢は大いに評価したい。私たちはこうした映画を見たときにすぐに「ハリウッドだけが映画ではない」なんて軽く口にしてしまうけど、本当は「ハリウッドだけが映画だった」んであり、映画はいつか(いつも)そこに帰りたいと望んでいるはずだと知らせてくれるのは皮肉にもいつも「非ハリウッド」なのだ。舞台がフランスとドイツの国境に位置するストラスブール/シュトラスブルクっていうのもこの監督の依って立つところの映画観の表れなんだろう。この人はアメリカで映画を撮るようになると思う。

「ダークナイト」 クリストファー・ノーラン
見逃していた「ダークナイト」をスクリーンで見ることができた。ジョーカーの「俺は今まで警官を何人殺したと思う?」という問いに対する答えが「6人」と聞いたときに、え、少な!と思わせてしまうのは、6という絶対数に感じる少なさではなく、その残虐さや冷酷さを十分に観客に知らしめることができなかったからだと思う。後半の「囚人のジレンマ」的な2隻の船のエピソードはジョーカーの思想の核になる部分なんだから、もうちょっとエモーショナルに描いた方が良かった。特に囚人の親玉が起爆装置をあれするところなんかは、べたでももうちょっとぐっとくる描写にできたはずだ。

ジョーカーの思想に関連して個人的に思うところを。人が善であることを怖れるのは「自分だけが善であることで割を食う」という考えが根底にあるからだと思う。優しさを見せて譲った方が損をする。自分だけが損をしたくないという考え方。一方で、悪であることに対しては宗教的な、あるいは倫理的な考えの前に、本能的と言ってもいい嫌悪感があるんじゃないだろうか。善であることに苦痛はないが、悪であることには苦痛や嫌悪感、居心地の悪さがつきまとう。結果として人は善であることも悪でもありうるが、自分(たち)の命を守るために大勢の命がかかった起爆装置を押すことに、一瞬でもためらいが生じてしまう程度には善であるという事実だ。この一点にジョーカーの、つまり性悪説の敗北があるはずなんだが、それがあんまり伝わってこなかった。まあ汲み取ったからいいけど。

映画に対してああした方がよかったとか、こうした方が良かったって思うのはもう既に十分にその映画の「お客さん」になってしまっている証拠だと思う。「ベストキッド」もしかり(笑)

「ベストキッド」 ハラルド・ズワルド
見ているときは文句なかったんだけど、後であれこれ考え出すと改善の余地はかなりあるという気がしてきた。でも、基本的には面白かった。ジェイデン・スミスはお父さんににてとても芸達者なお子さんですね。これだけの金と時間をつぎ込みたくなる気持ちは何となく分かります。もうひとつ、オリジナルはよくできていたなぁと改めて痛感。ノリユキ・パット・モリタのオフビート感は絶妙でしたね。ジャッキーの醸し出す陰よりも、ミヤギさんの「この人は何を背負っているんだろう」感の方が凄みがあったなぁ。まあ俳優の年齢もあるのかな。
オリジナルは2が沖縄編でしたから、今度は逆にデトロイト編とかでも面白いかもしれませんね。

俺の考えた真ベストキッド(中二風)
・ジャッキーが教えることをもうちょっと渋る。
・白人の友だちが裏切って中国人の味方。
・敵の李先生とジャッキーの因縁(元兄弟弟子とか)
・ジャッキーのトラウマはファミリーじゃなくてカンフーの達人としてのもの(過去に父親をカンフーで殺したとか弟子を特訓中に死なせちゃったとか対決で殺されたとか)
・龍の泉とかあの辺にいる修行僧がジャッキーに最敬礼(実はすごい人描写)
・母親転勤の経緯をもうちょっと詳しく。階層をもっと低く。やむを得ず感を出す。
・ガキをぼこるところはもっとアクション抑えめで(ガチでぼこるんじゃなくて軽くいなす風で)
・ドレに伝授するのも打撃なしの合気道のようなカンフー
・トレーニングの成果の見せ方。もっと偶然ぽく。「わかったら続けろ」みたいな感じで。最後まであまり練習の幅をひろげない。練習したことと試合での成果の関連性をひとつひとつもっと色濃く。
・万里の長城はクロスカッティングじゃなくて、夕日を背景にワンカットだけ。
・オリジナルオマージュのギャグをもう少し入れる(ハエたたきみたいな)
・ラルフ・マッチオがカメオ出演
・100分以内で

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