2013年5月29日水曜日

UN CINEMA EST UN CINEMA

「きっと、うまくいく」ラージクマール・ヒラーニ
まず、特筆すべきは主人公のランチョー(アーミル・カーン)の俳優としての素晴らしさだろうか。工科大学の新入生の1人なんだけど、どう考えても1人だけ「聖人」の域に達してるんだよね。学ぶことの楽しさを顕揚するっていう内田樹的なアティチュードでもって激烈な競争社会に一石を投じるんだけど、その投石のアクションのひとつひとつが完璧過ぎるのね。明らかに、同級生よりも学長よりも知的にも人間的にかなり先んじてて露骨にクラスが違うわけ。そういう聖人的存在にリアリティーを持たせたアーミル・カーン(命名:ムンバイのトビー・マグワイア)は本当に力強かった。さらに、そういうある種教訓的なエピソードに痛快さを見いだせるのは脚本が怖ろしく緻密だからだと思う。プロットの確かさ、現在と過去の行き来の滑らかさ、フリオチの芸の細かさとか仕事が丁寧。

脚本も演出もカメラもよくて、笑えるし、泣けるし、長いけどまったく苦にならないのに、それでもどこか釈然としないのは「完璧さ」をもってしても映画たり得るとは限らないってことだと思うんですよ。「桐島」を見たときの感じに似てるかな。面白いしエモーショナルに揺さぶられるけど、あえて引き合いに出すなら「ハズバンズ」のようには映画ではない。相対的な優劣はどうでもいいけどその線引きは確実にある。じゃあ映画を映画たらしめている核になるものって何なんだっていったら、それを名指すことはできないけど確実に感得できるものだとしか言い様がない。別に狭義の映画しか映画として認めないとかいうことではなくて、こんなに頑張っててよくできてても、たどり着けない境地があるんだなぁということです。


「建築学概論」イ・ヨンジュ
これは、いわゆる「韓流」の範疇を超えないものなんじゃないの?確かに面白い韓国映画はいっぱい見てきたけど、これはちょっとさすがに落ちるだろう。童貞ゆえの過ちってそりゃ青春に特有の事件ではあると思うけどさ、この主人公(イ・ジェフン)の性に対する貪欲さの欠如にまったく共感できないんだわ。肝心なところで変な自意識が性欲に勝ってる時点で童貞失格なんだよね。(それこそが童貞たるゆえんなのか?)

15年後の再会は男にとっては夢のような話かもしれないけど、結局気が強くて上昇志向の塊みたいな女とアメリカで暮らすっていう最悪の選択を放棄できない男にやっぱり共感できない。こんなに共感できない童貞初めてだわ。童貞にも子どもと大人がいるとしたら、ぼくはやっぱり大人の童貞でいたいと思うんですね。「ミッドナイト・イン・パリ」のオーウェン・ウィルソンみたいな。


とはいえ全然及第点ではあるんだけど「サニー」級を期待してたもんだから拍子抜けした。いつも坂で会う浪人生の先輩だけは出てくるだけで笑えた。ソウルは坂が多いんだね。「サニー」でも「息もできない」でも坂のシーンは印象的だった。

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