2012年10月8日月曜日

スーパーテロリスト鬱伝

「カルロス」オリヴィエ・アサイヤス

3部構成で合計5時間半の上映時間だったんだけど、こういうものは幕間なしでぶっ続けで見たい。国際テロリストのカルロスが、人間的魅力にあふれていて、本当に一瞬も飽きずに見た。僕は恥ずかしながらこの国際的に著名なテロリストのことをまったく知らなかったんですが、まず、ベネズエラ出身なのにイリイチというロシア風のファーストネームらしい、しかもモスクワの大学を出ているというところでかなり混乱して、「え、南米系のロシア人?」みたいな誤解をしたまま結構長いこと見続けていた。

ビンラディンみたいな人間がどうやって国境をまたいで移動できるのかという純粋な疑問にこの映画はわりと具体的な回答を示してくれている。東ドイツやポーランドにパレスチナ過激派がいかにして拠点を構えることができたのか?また大量の武器をどのようにして入手していたのか?そうしたひとつ一つが彼らにとっての「活動」であるということが非常に明瞭になる。「ビヨンド・ザ・マット」がプロレスのリテラシーを一気に高めてくれる映画だとしたら「カルロス」は国際テロリズムに関するリテラシーを一気に高めてくれる映画だといえる。

一方でこのカルロスなる人物が世代的にもそうなんだけどいわゆる昭和的な怪物で、とにかく欲望の総量がデカい。名誉欲、権力欲、性欲がすべからく強く、常軌を逸した行動力と根拠のない自信だけでのし上がっていく身近にいたらたまらないタイプの「豪傑」なのだ。だから見ている分には非常に面白い。そういう映画。

理念も語られるがそれが前景化されることはない。テロリズムの現場においては理念よりも、いかにして空港にロケットランチャーを持ち込むかの方が重要な課題だからだ。また、日本人のテロリストが既に故人であるポンピドゥーの肖像写真に銃弾を放つなどの無知が揶揄されているように、現場ではそれほど理念は重視されていなかったことが推測できるという点が面白い。マヌケと言っていいほど場当たり的で馬鹿な犯罪ばかりなのだ。

「一億総ツッコミ時代」じゃないけど世界的にこういう天然物の豪傑は出て来にくい時代だろうなあと思う。

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